未来のモータースポーツ

「近い未来 必ず自動車は自動走行になる

人が手動で車を走らせることはなくなるんだよ

そして そのことが僕にはF1GPの世界を モータースポーツの世界を

ショー化させてしまうと知っているんだ 」


そう言うケンの声は 決して明るくない

未来のF1GPの話なんて なんだかイヤな予想図でも描いているの?

 

「 いいかい? また話が飛躍するけど 昔は暴力が身近なところにあった

中学生同士のケンカ 教師や親からの体罰 先輩のシゴキ

それが良いとは言わないけど 男にとって暴力は 禁止されてはいなかったんだ

今はそれが世間から非難を受けて 禁止されている

その世論のタイミングと 格闘技の人気が出てきたのが 僕は一致すると思うんだ

 

リングスから K−1・PRIDE・UFCまで

暴力の社会問題化が顕著になるにつれて 総合格闘技の進出が目立ってきた

これも飛躍しているけど 禁止されると人々の欲望のはけ口は別に向かうと思うんだ
人間の感覚にまかせた運転なんて 危なくて信頼できない

現に年間1万人以上が 交通事故で殺されている

そんなのを野放しにするのも この数十年のものだから

いずれは自動運転で人にハンドルを触らせない未来が来る

 

 

 


「 ねぇ ケン それっていいことじゃなくて? 」


「 いいことだよ 歓迎するべきことだ ほら、僕は今から予言しておくよ

運転には快楽が伴う

そもそもドライブは 人類が奥深くから持っている 暴力・セックスに並ぶ

スピード感という根強い快楽だよ

これを止めることはできない


手動運転が禁止されても 体感操作によるスピードゲームは 終わることはないだろう

ハンドルを奪うことで 暴走族たちを一掃することはできても

お金を払ってハンドルを握る プライベートレース場は林立するだろう

そして K−1やPRIDEのように F1GPはよりメジャーな娯楽としての地位を築いてゆく

モータースポーツはもっと大きくなってゆくんだ

そこにレースクイーンのようなセックス面が強調され 競馬のような賭博性が加わり

クラッシュの暴力的爽快さ 他車を追い抜かす快感

そんなものが一大エンターテイメントになって肥大化すると思うよ


だから未来のF1GPは もう技術の粋を集めた挑戦だけ じゃなくなってゆくんだ

スピードを求めるエンジニアたちの飽くなき追及でもない

大衆に迎合したショー化してゆくのが 僕には見えるのだから 」


それがケンの言う 未来のF1GP モータースポーツの姿だった

ケン あなたの言うことも分かる 確かにその通りかもしれない


でもそれは今の価値観で 未来を見ているだけね

その状況になれば その状況下でも 違う価値っていうのを 人は見つけ出すと思うの

だから結局はケンの言うとおりになったとしても そこにいる人たちはきっと幸せなのだから


そうよ 未来のモータースポーツが不幸なんて 未来のF1が悲しみだなんて

やっぱり間違った見方だと わたしには思えているよ

 

 




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