未来のクラクション

ベンチャー企業を立ち上げる時、僕は思ったよ。

仕事にするなら、夢のあることを。

一生のうち、きっと一番長い時間を費やすのが仕事でしょう。

それならいっそ、仕事で夢を見たい、って。

 

そこで僕が目を付けたのは、燃料電池車のクラクション開発

未来の自動車があるね。

ハイブリッド、電気自動車、天然ガス自動車、燃料電池車。

車会社のイベントで未来の車に乗せてもらった時、驚いたよ。

その静かな車内、エンジン音がしないのだから。

それはそうだよ、未来の自動車にはエンジンがないのだから。


ミーハーな僕が乗っているのは、ホンダのインサイト。

憧れのハイブリッド車だよ、騒音を出さない未来の自動車さ。

ハイブリッドにはまだエンジンがあるけど、モーターとのシナジー効果で騒音をシャットアウトしてくれる。

インサイトでアウトサイドをドライブしていると、

ハイブリッドテクノロジーのモーターサウンドがサイレントだから、

ウォーキングやジョギングしているネイバーたちはインサイトをスルーしがち。

 

 

 


何度も経験があるけど、接近しても歩行者たちはインサイトが迫ってきていることを認識してくれないんだ。

その度にゴメンね、って思いながらクラクションを鳴らして警告を促すと、

歩行者たちはクラクションの音にびっくりして、インサイトに道の真ん中を開け渡してくれる。

僕は胸を締め付けられるような思いだよ、インサイトの静寂音は嬉しくても、クラクションを鳴らすことは、悲しいことだから。


インサイトに乗っている経験が活きたのかな、それで僕はクラクションに興味を持った。

未来のクラクション、燃料電池車のクラクションは、人に心地よいサウンドにしたい、って。


だから僕のベンチャー企業は、「未来クラクション」っていう社名にしたよ。

2020年には自動車業界の主流となっているだろう燃料電池車のクラクションを、

今のうちから先行開発して、いずれは未来クラクションがこのニッチマーケットの絶対メジャーになる。

その最終目標を目指して、僕の未来の車のクラクション開発は始まった。


燃料電池車のクラクション?

騒音の完全シャットアウトを実現した未来の車に、うるさいクラクションは必要ない。

それでも歩行者たちに車の存在を知らしめる音、かつ、鳴らされて決して悪い気持ちがしない音。

僕は真っ先に自然界に目を向けた。

人間の住む社会や、無機質な機械音なんかは最初から当てにしていなかったよ。

快適を生むのはいつも自然界だから、未来クラクションは自然界にヒントがあると思った。


音がキレイなのは何?

野鳥は美声の代表格だし、滝壺に落ちる水の音、古代貴族が美しいと和歌に詠んだ牡鹿や河鹿蛙の声がある。

思い切った音なら、倒木の悲鳴、崩壊する氷河の叫び、親鳥を呼ぶ雛鳥のシャウト、人間の赤ちゃんの泣き声。

どれも採用に迷ったけど、僕は未来クラクションには生態系の豊かさを担保してあげようと、

様々な鳥の音色を採用することにした。

まだ未来クラクション開発は立ち上がったばかり。

その記念すべき第一号は「メジロ」という小鳥の音にした。

小笠原諸島だけに生息する、貴重な鳥が「メジロ」だよ。

本当に危機を知らせるときは、「アフリカゾウ」の叫びで。


まずはこの2種類の未来クラクションを開発していこうと思っている。

どうだい、僕の考える未来の自動車のクラクションは?

今はまだ空想でしかないけど、あと十年のうちに未来の自動車、燃料電池車が街中を走り回る頃、

車種によって色様々な未来クラクションが鳴っている。

面白いだろう?そのぐらい平和な音があってもいい。

そんな夢を抱いて、僕は未来クラクションを開発してみるよ。

 

その後は未来のフラッシュ。

きらびやかなフラッシュで、迷惑かけずに歩行者へ車の存在を知らしめたい。

未来の自動車に楽しい夢を託して、未来クラクションは僕に夢を与えてくれるよ。

 

 




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